今度は2010年の秋に撮影した北海道の停車場線のレポートを紹介しよう。「道北一日散歩きっぷ」という旭川市内と深川駅でしか買えないフリーエリアタイプの乗車券がある。朝一番の普通列車に4時間揺られ、フリーエリア北端の天塩中川駅までやってきた後、例の如く次の列車を待つ長めの滞在時間。その時のんびり撮り回ったのがこの道道である。
Information
路線: 北海道道438号 天塩中川停車場線
起点:中川郡中川町字中川(JR天塩中川駅前)
終点:中川郡中川町字誉(R40交点)
延長:1,218m(実延長)
沿線:JR天塩中川駅 中川町中心部
走行:全線(起点→終点) 2010年9月26日撮影
Report 1/1

 JR天塩中川駅

 旭川から4時間ほど乗車し続けたキハ54形気動車を見送る。確か下車客は私だけだった。

 JR北海道においてキハ54形は釧路・花咲線・宗谷北線の3つの運輸営業所と旭川運転所に配置されている。ものの情報によるとJR北海道の在籍台数は501-529(520は事故で廃番)の28両。この内宗谷本線に配置される可能性のあるのは15両。これらの車両はそれぞれ個別に改装が施されており、内装や座席配置が微妙に違う。宗谷本線に慣れ親しんでいる中級以上のファンなら、車両番号と内装について1両1両区別できると思われる。
 天塩中川駅の駅名票。隣駅の佐久と歌内が両方共張り替えられた痕跡があるが、これは「佐久」が元々「琴平」(1990廃止)、「歌内」は元々「下中川」(2001廃止)であったことによる。

 駅番号はW64。64というのは札幌駅を起点(01)として駅数をカウントしたもので、アルファベットは運行系統を表す。よって、札幌から63駅、旭川(A28)から36駅となる。ちなみに稚内はW80の駅番号であるから、上川振興局内の地域といえど駅数的にもだいぶ稚内寄りなのである。
 JR北海道の駅ナンバリングはこのように少し特殊な付番をしているので、詳しくはWikipediaの記事に譲る。
 2番線ホームから見た駅舎。2010年、1953年完成の昭和臭い駅がそこに佇んでいたが、2014年に中川町により改修されて「レトロ」調になった。

 ちなみ、この駅は現在無人駅である(ただし、切符販売は近隣に委託している)。撮影当時、向かって右側にある入口から入れる待合室以外のスペースは物置状態になっていた。こういう駅の事務室スペースは既に別目的で利用されている以外、除雪担当の職員が詰めるスペースになっていることもあるが、一度入ってみたいものである。
 駅発車時刻表。この駅は2つホームがあるが、駅舎側1番線には旭川方と稚内方の両方の信号設備があるため殆どの列車は1番線を発着する。

 画像が小さく文字が見にくいかもしれないが、撮影当時は9時52分発/着の普通稚内行で天塩中川までやってきた。旭川方面に折り返す次の列車は12時36分となる。その間2時間44分。めっちゃ長い・・・
 旧駅舎内部

 駅待合室、というか駅舎内の様子。あんまりきちんと写っていないが、どこの地方駅にもある緑色の待合椅子にお手製座布団、そして冬期用の石油ストーブ。その向こうには既に役目を終えた駅窓口と一応役割のある料金表がある。

 ちなみに、この待合室風景は天塩中川駅では既に失われて・・・。
 現駅舎内部 こうなった。

 一つ上の写真の窓口と扉の位置は恐らく変わっておらず、ちょうど「閉ざされた事務室」に該当するスペースは机と椅子が整然と並んだ「交流プラザ」に生まれ変わった。

 ちなみに、「交流プラザ」の利用は有料で、1時間220円(夏期・昼間)から利用可能。申請書を見たところ営利目的での利用も大丈夫っぽい。

 実例として、工作などのワークショップや写真展開催が行われた模様。
 待合室自体の様子はこんな感じ。木がふんだんにあしらわれたデザインで、あの「駅ならどこにでもある」椅子は背もたれ付きベンチに改められた。大きさの割に座面が平らなので駅寝に向いてそう

 また、画面奥にはバリアフリー対応のトイレもあるし、冬期の待合室にはきちんと暖房が入る。レトロ調の見た目と裏腹に機能的だ。
 旧駅舎外観

 この駅舎の姿は現在の駅舎と違うので要注意。個人的にはこの現役の古臭さが好きなのだが・・・

 
 現駅舎外観

 2014年に中川町がこの駅舎を取得し、改修工事を経て「開業当初の姿」を再現するいわゆるレトロ調に改められこのよう姿に。

 また、その改修と同時に「閉ざされた事務室」も「地域交流スペース」という形に生まれ変わった(施設名 中川町交流プラザ)完全に今流行りの自治体管理/公共施設型の無人駅である(隣の佐久駅も同様)。

 道道438号起点

 この駅にも下車客を出迎える「駅前アーチ」が設置されている。手厚いぞ中川町。

 なお、アーチを潜った先の白線の引いてある道路が道道である。それと、このアーチの裏側には「元気発信!なかがわ」と書かれてある。歓迎はするけど「また来てね」とかは言わないんですね・・・
 ようやく道道のトレースに入ったところで、路線の地図を貼り付けておこう。
 r438天塩中川停車場線は、駅前を出てすぐにr541問寒別佐久停車場線と重複し北方向へ方向を変えるが、数百mでまた方向転換(重複区間終わり)、天塩川をわたってR40へ向かうという停車場線にしては少し凝ったルートをしている。
 ここでr541問寒別佐久停車場線との交点。標識などは特に無いが、r438はここで右折する。

 なお、左折すると中川名物「ぽんぴら温泉」へアクセスできる他、温泉施設に向かう途中で天塩川を渡ってor道道541号を南下することにより佐久以南にも繋がっているので、R40を利用するからといって必ずしも右折する必要はない。
 右折すると住宅と商店に挟まれた中川町の中心街となる。
 道管理の"目抜き通り"とあってお洒落な街灯やブロック舗装?の歩道が目を引く。

 見ての通り路側帯が非常に広いが、これは雪対策の1つでもある。中川町は特別豪雪地帯にも指定される北海道随一の豪雪地域であり、北海道の最深積雪記録(396cm,1957.3.14)を記録した地点でもある(ただし、中川町では気象庁による積雪の観測を行っていないため、どこか別の機関による観測の記録と思われる。ソースが無いので怪しい。)。
 ピンぼけだが、ここに中川町唯一のコンビニ、セイコーマートがある。

 余談だが、セブンイレブンは美深町が、ローソンは雄武町が日本最北であり、道北に来るとほぼ完全にコンビニ=セイコーマートであり、一部の旅行者やキャンパーにとっての頼みの綱となる。
 左折:r438 国道40号
 直進:r541 問寒別

 r438はここで暫く重複していたr541と別れ、進路を左へ。

 r541はこの先、宗谷本線と並走しつつ天塩川右岸を北上する。R40のバイパスとして機能しうるが、稚内方面に向かう際利用するメリットはあまりなく、また、途中の歌内も駅のすぐそばに天塩川を渡る橋があるため、利用するメリットが発揮されるのは中川or佐久から問寒別経由で中頓別に抜けるといった奇特なパターンくらいしか無い。
 1つ上の画像の左端に道道標識のあのシルエットがあることにお気づきだろうか。

 正面から見てみると、良い感じに古いr438の路線番号案内標識であった。

 同じ宗谷本線沿線で年季の入った道道標識に会える場所としては、r445紋穂内停車場線の終点(=R40交点付近)が挙げられる。裏面は勿論表面も「焦げ」始めたその姿、何度でも見たくなる。
 交差点を左折してすぐの風景。
 450m先交差点
 右折:R40 稚内 豊富
 左折:R40 名寄 美深

 この先天塩川を渡るので、交差点までの距離が少し遠い。
 また、補助標識にある「エコミュージアムセンター」は左折10km。この施設はいわゆる自然誌博物館で、ちょうど佐久駅の対岸にある。どうでもいい情報だが、ストリートビューでこの標識を確認すると「エコミュージアムセンター」に対する英字表記が「Ekomyujiamu Center」となっている。案内標識によくあることとはいえ、上川支庁にもっと英語のできる人はいなかったのか・・・
 89km 稚内  →
 ←音威子府33km

 ここで少し字体の違う距離標識。もちろんこの先のR40交点からの距離である。しかし、中川から稚内って思ったより近いんだな。

 超どうでもいい情報だが、「エコミュージアムセンター」は「Ecomuseum center」と綴る。施設を指す時にはcenterという語を付ける必要は(おそらく)ない。ecomuseumという単語はecology + museumからなる造語で、「住民参加」により地域の自然と文化、生活などを「総体として」展示、保存、etcする考え方とその実践を指す(wikipediaより)。中川町のエコミュージアムセンターはHPを見る限り施設的には自然誌博物館がメインという印象があるが、宿泊体験施設も伴っており、町HPにはecomuseumの考えがしっかりと記載されている。
 中川橋にて天塩川を渡る。長さ334mと実は結構長い橋梁である。

 とはいっても、川の長さ日本4位の天塩川の、それも河口から60km程度上流で、河畔林も跨いでこの長さであるからむしろ短い(=川が細い)のかもしれない。事実、天塩川は大きな支流がなく長さは4位でも流域面積は日本で10番目である。流域面積が小さいということは、それだけ集まる水量も小さいということになる。

 ちなみに車道上の安全を確認してからこのアングルで撮影していることを念のため注記しておく。交通量はめちゃめちゃ少ない。
 歩道から天塩川下流側(北側)を眺める。穏やかに流れる川の水面はまるで鏡のように秋空を映している。

 長さの割に流域面積が小さく、更に水源の標高が低いという意味で、天塩川は東北の阿武隈川に似ていると感じる。

 道道438号終点

 右折:R40 稚内
 左折:R40 名寄

 天塩川を渡りきるところで国道40号と交差し、r438のトレースはおしまいとなる。橋の欄干の上に、控えめながら案内標識が設置されているのはありがたい。
 交差点の様子。繰り返すが、日曜日の午前とあって交通量が超僅少であり、この位置で撮影しても安全なことをきちんと確認している。良い子は真似しないでね。
Impressions
 2015年6月という微妙な時期にあえてこの路線を公開したのは、ちょうどこの時、LCCとレンタカーで道北に行こうという弾丸ツアーの準備をしていたからだったりする。

 r438の特徴は、駅を出てから2回曲がること、途中で天塩川を渡る長大な橋梁があることの2つである。この構図は同じ宗谷本線沿線のr445紋穂内停車場線に似ているが、停車場線全体として見渡してみるともっと延長が短くシンプルな路線がメジャーなため、レアケースといえる。
 それと、古ぼけた旧字体の道道標識が残っているのもおいしい。駅は改修されて綺麗になった現在、道道標識だけ時間が止まってしまった(?)かのようである。

 また、晴天の日には青空を水面に映し出す、まさに天塩川らしい川の姿が見られるのも魅力である。駅前散策がてらトレースするには少々長い路線だが、本数稼ぎ以上の価値は十分あるといえよう。

Links
 北海道道445号 紋穂内停車場線
 同じく宗谷本線の駅を起点とし、天塩川を渡り、国道40号に接続する。
 r438と違い、周囲は人口希薄地帯となっており、独特の寂しさがある。

 北海道道541号 問寒別佐久停車場線
 この道道と暫く重複した下位路線。
 国道40号線の対岸、天塩川右岸を南北に結ぶ中川町のメインストリートの1つ。


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最終更新日:15年6月18日 inserted by FC2 system