北海道最北端の都市、稚内を中心とする宗谷管内。日本の実効支配地域として最北の村、猿払村の南部にあり、水没道道として名高いのがこの道道、上猿払浅茅野線だ。
Information
路線: 北海道道732号上猿払浅茅野線
起点:宗谷郡猿払村上猿払(r84交点)
終点:宗谷郡猿払村浅茅野(R238交点)
延長:総延長 17,896m
沿線:猿払村浅茅野地区、他
走行:全線(終点→起点) 2017年6月18日撮影
Index

 北海道道732号上猿払浅茅野線 第1部 [終点(R238交点)→ トレース前半]
 猿払村内南部の浅茅野地区から、早朝の林間道道へ突入する。

 北海道道732号上猿払浅茅野線 第2部 [トレース後半 → 起点(r84交点)]
 延々と続く猿払川沿いの原生林を通り抜け、面影すら見つからぬ廃集落、上猿払地区まで走り抜ける。

Report 1/2
 左折:r732 豊富
 直進:R238 稚内 浜鬼志別

 r732終点の予告標識が現れるが、交点はまだ先。
 直進:稚内 77km
 直進:浜鬼志別 17km
 左折:豊富 49km

 浜鬼志別は猿払村沿岸部の中心集落。浅茅野は既に猿払村内なのだが、距離感が半端ない。
 道道732号終点

 ここで左折するとr732・r84を経由して豊富に至る・・・のだが、r732が未舗装路であることなど全く気に留めていないのか、距離標識は平然と書かれていた。

 猿払から豊富へのアクセスは、鬼志別付近からならr138を経由して、浅茅野付近からならここより6km浜頓別寄りを通るr710浅茅野台地浜頓別線を経由して行くのが無難である。
 左折すると集落内に入る。集落には郵便局、リサイクルセンター、交流センター、寺院、小学校はあるがこれといって目立つ商店などはない。
 古びた標識がr732トレースに向かう奇特な旅人たちを出迎える。
 集落はこの交差点を右折した先にも少し続いているが、直進すると数軒の建物の向こうは原生林となる。
 道路情報掲示板。そろそろ浅茅野地区も終わりといったところだ。
 電光式の道路情報板も出迎える。通行止め時にはピカピカと光って仕事してくれるのだろうが、今回は何事もなく通れるようだ。

 しかし周囲の雰囲気は既に無人地帯まっしぐらである。
 間もなくセンターラインもなくなる。
 普通河川 猿払一号線川 堀川橋

 猿払川支流にかかる橋。この先、こういった短小橋梁が幾つか存在するが、その1つ1つに明確な標識が設置されている不思議。
 17kmポスト。

 この道道の総延長は17,896mであるから、起点から1km足らずでこの原野風景である。

 浅茅野地区はもちろん有人の集落ではあるが、ヒグマの目撃情報は年数回以上のペースで報告されており、動物に対する警戒はほぼ無人の森林地帯と同じレベルか、それ以上が求められる。
 ムメイ川を渡る古川橋。

 河川名だが、他にも「ムメイ川」表記の橋梁標識が存在することから、河川に名前がついていない「無名川」という理解のほうがよさそうだ。
 この先上猿払まで 路面冠水の時には
 通行止になります

 路面冠水時通行止めという他ではあまり見ない条件が書かれた標識、その向こうには閉鎖のためのゲート。
 この先16km 砂 利 道

 間もなく舗装が途切れる。いよいよですね・・・
 そして舗装区間最後の標識はr732表記に加え「冠 水 注 意」の文字。

 冠水道道として名高いr732、ついにその姿を見せはじめる!
 道路はしばらく見通しのいいストレート。朝5時前の柔らかな日差しが原生林を包み込む。

 この日の猿払は暦計算によると朝3時43分に日の出を迎えていた。北海道の6月はその気になれば15時間ほど昼の時間として使えたりするのが非常に楽しい。
 冠水道道とはいえ最近降雨がない、となるとr732は単なる未舗装道道なのかな・・・と思っていたところに、黒いブツが現れた。

 矢印の先にあるこの物体、実は浅茅野から何個か見かけていたのだが、恐らく石や土塊や植物片ではない。動物のかもしれない。そう思うと戦慄せざるを得なかった。

 猿払で、ヒトより大きな糞をする動物はヒグマしかいない
 猿払は昔からヒグマの出没率が高く、獣害事件の話もある地域である。クマのサインが落ちていることは十分ありえることであり、わざわざ近寄って確かめる気もなかったが、時間帯は早朝、野生動物が全体的に活発な時間帯である。

 どうかヒグマに遭遇しませんように・・・。
 ストレートの途中には立派な待避所がある。周囲の笹薮も開けており、まだ安心して使える場所だ。
 直線路の突き当りで林道が左へ分岐する。電線もそちらへいってしまう。
 その先には小さな橋梁と、その向こうは河畔林。
 猿払川支流にかかる橋。前後は橋よりだいぶ低いところを通っており、正直このあたりでも冠水可能性があるのではないかと思うほど。
 橋を渡ると道道は一気に狭く、そして湿っぽくなる。周囲の木々はシラカバが目立つが、全体的には人の手の入っていない原生林で、下草の藪も深い。
 待避所標識。
 待避所は右側。普通車1台がなんとか収まる程度。
 菖蒲橋で再び猿払川支流をまたぐ。
 橋から川面を拝むことはしなかったが、周囲の植生は明らかに河畔林である。こっそり水深標まで置かれている。やばい、ここは沈む。  
 今度は「P」標識が待避所前に置かれている。統一性・・・。
 線形は緩やかで、何の変哲もない直線だったが、恐らくこのあたりで戦慄する出来事が起きた。


 そう、ヒグマに遭遇してしまった

 ヒトと同程度のサイズの黒い成体が、車の気配を察して遥か前方を疾走して逃げていっただけだったが、北海道に十数年もいながら、野生のヒグマと遭遇したのは初めてである。背中に嫌な汗が伝った。
 あたりはずっと河畔林。冠水時通行止めの標識が現れる。

 私は車載装置を利用しての撮影であり、光量の少ない早朝とあって30km/h程度でゆるゆると走行していたが、ヒグマの逃げ足は車より速かった。要するに、追いかけられると人間の足どころか場合によっては原付でもだいぶ危ないのである。

 冠水時通行止

 水深標は道路の冠水の程度を表示しています 冠水時通行しないで下さい

 いや、普通冠水時って「通行しないで下さい」じゃなくて、そもそも通行止めになるのでは・・・。と冷静にツッコみたくなる。ヒグマもいるしこの道路、通るなら自己責任という感覚がそこらじゅうに溢れている。
 そして車から下りずにそーっと左側の水深標を撮影する。もちろん撮影時は水深など無いが、猿払川が本気を出せば1mを越すこともあるのだろうか、実際に冠水している写真を見たことがないのでわからない。それよりもクマのほうが怖い。

 というわけで、続きは第2部。動物はまだ登場します。
最終更新:2018年2月1日 
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